第19話 アオイの出会い

「ラルフやファイスと別れて行動なんて久しぶりね」

私はリンと一緒に森の中を歩いていた。

「あたいもだよ、旅を始めた時からみんな一緒だったからね」

「そうよね~、なんか不思議な感じ。
それにしても、森に入れば直ぐに着くとあのエルフのおじさんは言っていたけど、いつまで歩けばいいのかしらね」

どちらかというとインドア派の私にとって長い距離を歩くというのはなかなかにハードだった。

「アオイ、こんなんでへこたれてたら立派な戦士になれないよ!」

「私は僧侶を目指すからひ弱なままでもいいのよ。
リンはゴブリン族ではあっても女の子なのによくそんなに動けるわね」

「あたいは小さいころから鍛えているからね!」

「ガウ!」

「スイも任せろだって!」

「二人とも頼もしいわね!」

リンとスイが前を、私が後ろを歩きながら二人と一匹で森の中を進んでいく。
こちらの世界には日本では見かけない植物や生き物たちがいて、ただ歩いているだけでも驚きの連続だった。
コウイチ達や国王の暴走を止める目的がなければゆっくりと森林浴をしたいと思うほどにこの森は神秘的だった。

「アオイ、ぼーっとしちゃってどうかしたの?」

「ううんなんでもないわよ。
ただ、この森が綺麗だなって思っただけ」

「あたいもこの森大好きだよ!」

「ガウ!!」

私の前を歩く活発な少女リンはゴブリンで、それに寄り添う形で歩くスイはスクイッグだ。
さっき森の前で別れた頼りになる男性ファイスはゾンビで、その傍の半透明な体でふわふわと漂っているカースはクロウゴーストだ。
もし日本にいたころ何も知らずに彼らのような魔族、魔物といった者たちが突如目の前に現れたとしたら、私はその異形の姿に恐れおののいていたと思う。
ただこの世界にいる彼らは、姿や形こそ違うけれども、私たち人間と同じ心を持った大切な仲間であり友人だ。

「人は見かけによらない、か」

そんな言葉を口にしながら、私は足にぐっと力を入れ直し歩き始めた。

——-

森の中を歩き続け、辺りの木々の隙間からオレンジ色の光が差し込み始めたころ
私たちは木造の家が立ち並ぶ少し開けた広場のような場所に到着した。

「そこのお前達! 何者だ」

広場の入り口にいたエルフの男性に聞き覚えのある言葉で呼び止められ、私たちは事情を説明した。

「なるほど、確かに魔王様の使いのようだな。
ではミロン様のところに案内しよう、ついてきなさい」

案内された家は広場の中でもひと際目立つ大きな大木の傍に立っていた。

「ミロン様、フーでございます。
今お時間よろしいでしょうか?」

「私に何か用ですか」

エルフの男性、フーさんが家のドアをノックをし呼びかけると中から声が聞こえてきた。
落ち着きのある透き通った女性の声だった。

「実は”魔王様の使い”を名乗る者二名がミロン様にお会いしたいと申しておりまして
この者たちが”魔使いのペンダント”を身に着けていることも確認済みでございます。」

「魔王様の使いですか、わかりました。
入りなさい」

「では失礼いたします。
君たちも入りなさい」

「失礼します」

「失礼します!」

フーさんに導かれ入った家の中には几帳面に本棚に収納された本たちが所狭しと並んでいた。
その奥には木の椅子に腰かけて佇んでいる女性がいた。

「あなたたちが魔王様の使いですね。
初めまして、ミロンと申します。」

椅子から立ち上がりミロンと名乗ったエルフの女性は、童話やゲームの世界からそのまま出てきたような美しさだった。

「エルフって本当に綺麗なのね」

「どうかしましたか?」

「いえ! えっと、女性のエルフって初めてで。
私はアオイと申します」

「あたいはリンだよ!
そしてこっちはスイ!」

「ガウ!ガウ!」

「これはまたずいぶんと初々しい魔王の使いさんたちね。
あなた方がここへ来た理由は大体察しております。
ここ最近の狂暴化した新種の魔物のことについてでしょう?」

「その通りです。
ミロンさんもご存じということはこのあたりでも何か被害が?」

「ええ、私たちの仲間が何人か襲われました。
幸い重度なけが人や死者は出ておりませんが」

「そうだったんですか」

「それも重大な問題ですが、私たちには先に何とかしなければならない問題があります。」

「何とかしなければならない問題ですか?」

「はい。
私たちの同胞が先日連れ去られました。」

「連れ去られたですって!?
一体誰がそんなことを・・・」

「あなたは彼らを、”ドワーフ族”を知っていますか?」

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