第15話 その偽りの街で

「・・・みんな、これを見てくれないか」

「えっ、これって確かラルフが持ってた本だよね。
これがどうかしたの?」

「内容をみてくれないか」

皆が俺の持っていた『村人の常識』を読み始めた。

「ラルフ・・・あなた確かこの本を国王の部屋で見つけたのよね?
これって私たちのプレイしていたゲームに出てくる村人そのものだわ」

「ゲーム? お嬢ちゃん一体何を言ってるんだ?」

「実は私この世界の住人ではないんです、別の世界からこの世界に来た人間なんです。
それで私のいた世界にある・・・おもちゃのようなものに出てくる村人の行動と言動がこの本に書かれている内容とまったく同じなんです」

「別の世界からって、信じられない話だな。
それにここに書かれてる内容って街の連中の行動や言動とほとんど同じじゃないか!? 一体どうなってるんだ」

「・・・これは恐らく国王の仕業だと思います」

「国王だと? それは一体どういうことだ?」

俺たちはガントさんに事情を説明した。

「あの国王の良い噂ってのは聞いたことがなかったが、まさかそんなに危ねぇ奴だったとはな。
まぁそれくらいぶっ飛んだ話じゃねぇとこの状況は説明できないよな」

「しかもあの国王はとんでもない力を持っているんです。
正直俺には何をしているのか理解できないほどでした。
だから今回も何か力を使ってこの街の人たちを洗脳したんだと思います」

「なんて外道だ! くだらない目的のために街一つ作り替えちまうなんて」

「たぶん国王にとっては『ゲームに出てくる街そっくりの街を作る』ということは大事な事なんだと思います。
ゲームについて語る国王は妄信している信者のようでしたから。
だからこそなんとかしなくちゃいけないんです! あんな危ないやつを野放しにしていたら世界はどうなるか・・・」

「でも国王は自分の魔物で襲わせた王都の民すらだまして仲間に取り込んだんだろう?
そんな強いやつ相手にお前たちは勝てるのか?」

「現状では勝てないと思います。
だからといって指をくわえてみているわけにはいきません。
今旅を続けていろいろな場所をめぐって、少しでも多くの人たちに今の現状を知ってもらうことが大事だと思うんです」

「世界を敵に回した国王を倒すために世界を味方につけるわけか・・・面白れぇじゃねぇか! 協力させてもらうぜ!」

ガントさんはニカッと笑った。

「とはいっても住む場所を奪われた俺には何もできないんだよな
これから行く当てもないし一体どうすれば・・・」

「もしよければラントリールに行ってみませんか?」

「ラントリール?」

「俺の故郷なんです!今から手紙を書くのでそれを村長に見せてください」

「悪いな世話になって」

「困ったときはお互い様ですよ。
今こそ俺たちがこの世界の平和のために協力するべきだと思うんです」

「わがまま放題の国王と違ってラルフはずいぶんと大人なんだな。
この世界のことよろしく頼むぞ!」

「はい!」

ガントさんは大きく手を振りラントリールに向かっていった。

「ラルフこれからどうする?
この街をもう少し探索しようにも私とリンは手伝うことができないが」

「だよね・・・じゃあ俺とアオイでもう少し探索してみるよ。
もしかしたらガントさんみたいに運よく洗脳されずに取り残されている人がいるかもしれないし」

「わかった、くれぐれも気を付けて」

「ラルフ、アオイお願いね!」

俺とアオイは再びリーカクを探索することにした。

「何度見ても不気味な光景だよなぁ。
皆まったく同じ行動をずっと繰り返してる」

「私のやってたゲームは確かにこんな感じで皆同じ動きを繰り返していたけど
現実で見るのがこんなに気持ちの悪いものだなんて思わなかったわ。
あれ・・・あそこ」

アオイが街の隅で何かを見つけて俺も後を付いていくと、そこには一羽の小鳥が横たわっていた。

「この小鳥まだ生きてるみたいね。
誰かが飼っていたのが逃げ出したのかしら、前に使った応急処置用の道具は置いてきちゃったわ」

「アオイ、一旦街の外に戻ろう」

俺たちは小鳥を抱えて街の外に出た。

「二人ともどうだった?
その小鳥は?」

「可愛いね! あたいにも抱かせて!
あっでも、弱ってるみたい」

「街はずれで見つけたのまだ息があるみたいだから何とかなるはずよ」

アオイは手際よく応急処置を施した。
小鳥は心なしか力が戻ったように見えたが、しばらくすると息を引き取ってしまった。

「ちゃんとした回復魔法とかが使えれば・・。もう少し早ければ何とかできたかもしれないのに・・・」

アオイは今までにないほど悔しい表情をしていた。

「アオイ・・・」

「おい、みんな小鳥の体から何か出てきたぞ!」

ファイスが慌てた様子で冷たくなった小鳥のほうを指さしたが何も見えなかった。

「ファイスいきなりどうしたの? 何も見えないけど」

「お前もしかして小鳥の魂か何かなのか?
皆にも姿を見せてやってくれないか?」

ファイスが呼びかけると、何もないはずのところに半透明な大きなカラスが現れた。

「そこのゾンビさんの言う通り僕はさっきそこの女の子に助けられた小鳥よ」

半透明の鳥は口を開いて言葉を発するわけではなく、脳内に直接語り掛けてきた。
あまりの突然の出来事に俺たちは皆驚いてしまった。

「ふふっ、驚くのも無理はないよね。
僕自身だって驚いてるよ、だってさっき死んだんだもん。
死ぬ前にせめて僕を助けてくれたお礼が言いたいと思っていたら、いつの間にかこんな姿になっていたんだ」

「あなたの姿ゲームに出てきた『クロウゴースト』って魔物とそっくり・・・あなたは幽霊なの?」

「そういうことになるのかな。
僕を飼っていたご主人も街の人たちも数日前から突然おかしくなって台所をぐるぐる回り続けることしかしなくなって、
いつももらってた餌ももらえなくなっちゃってそれで頑張って籠から出たんだけど・・・
でも最後に君に助けてもらえて本当にうれしかったよ、僕を助けてくれてありがとうね」

「・・・異世界って本当にいろんな不思議な事が当たり前に起こるのね」

「あれ? そこの女の子にお礼を言えば成仏できると思ったんだけど、どうやら違うみたいだね。
どうしよう?」

「もしかしてただの幽霊じゃなくて私と同じ不死者に転生したんじゃないのかな?」

「ゾンビさんと同じ?」

「ああ、私も訳あってゾンビに転生したものでね。
君のことはなんだか他人な気がしないんだ」

「不死者かぁ、だったらさ僕も連れてってくれない?
行く当てもないしゾンビさんが仲間にいるなら僕もいいでしょ?」

「私は不死者仲間が増えるから賛成だ! 皆はどうだ?」

「もちろんいいよ!」

「私も歓迎よ!」

「あたいも賛成! 賑やかで楽しくなりそう!」

「ゾンビさんも皆もありがとう!」

「仲間になるんだからそのゾンビさんっての止めてくれないか?
私の名前はファイスという」

それから俺たちは順番に名乗った。

「皆いい名前だね~
僕も名前がほしいなぁ。
生きてた頃の名前はなぜか思い出せないから何か考えてくれない?」

「・・・カースなんてどうだろうか?」

「カース! 綺麗でかっこいい響きだね! 僕にぴったりだ!」

「気に入ってくれて何よりだ」

「では改めまして。
僕はカース! 皆よろしくね!」

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