雨降り酒場の晩餐会

台本

雨降り酒場の晩餐会

作者:でんじぃ

 

 

登場人物

断罪のユーリ:冷静で礼儀正しい
不眠のモリー:ゆったりとして可愛らしい
葬制のアンク:大柄で豪快
田中:大人しくてどこにでもいそう
ナレーション:(兼ね役可)

※性別の指定は特にありませんので、全役性別不問です。

一人称や口調の変更はイメージが大きく変わらない範囲で自由にしていただいて大丈夫です。

利用規約や連絡先に関してはサイトメニューの「CREATION」の「声劇台本」からご確認ください。

 

ナレ:都会の片隅の人通りもない路地裏にある、古びた酒場の前に、フードを被った人影が一つ。
   表には「あなたの狩りの話お待ちしています」とだけ書かれた立て札が立てかけられている。
   小雨降る薄暗い路地裏で、傘もささずに佇む人影は、辺りを一通り見まわすと酒場の中に入っていった。
   しばらくした後一つまた一つと、同じフードを被った人影が酒場の前に立ち止まり辺りを見回し入っていく。

ユーリ:二人ともよく来てくれました!ようこそ恐怖の晩餐会へ!
    待ちくたびれるところでしたよ!
    今宵はこの断罪のユーリが見事な判決を下しましょう

モリー:ユーリは相変わらず気合が入ってるね~
    僕もこの日を待ち望んでいたんだよ!
    昨日は遠足前日の小学生のように興奮で眠れなかったよ~

アンク:お前は昨日だけじゃなくてその前の日も、一週間前だってずっと寝てないんじゃないのか?
    不眠のモリーさんよ、目元の隈を見ればすぐわかるぜ?
    そんな調子で大丈夫かい?

モリー:心配には及ばないよ~
    これから始まるパーティが楽しみで楽しみで興奮で元気いっぱいだよ!
    そういうあんたのその隠しきれない死の臭い・・・さては相当な死闘を繰り広げてきたな?
    疲れてないかい?

アンク:この葬制のアンク、死の臭いを纏っているのはいつものこと
    それにお前と同じで楽しみすぎて疲労はどこかに吹き飛んださ!

ユーリ:フフッ、二人ともパーティが相当楽しみなご様子
    さぞかし良い”狩り”をしてきたんでしょう?
    前置きはこれくらいにして早速前菜といこうじゃないですか!

モリー:そうだね、それじゃあ僕から狩りの話をー

???:あのぉごめんくださーい
    表の看板を見てきたんですけど・・・

ナレ:三人がいる酒場の中に、フードを被っていない人影が入ってきた。
   雨に濡れないように、ちゃんと傘を差していた。
   怪しげな雰囲気が漂う酒場に似つかわしくない人物の登場に
   三人は驚きを隠せないようだった。

モリー:んん?きみ誰?フードは?

???:フード必要なんですか?すいません
    実は表の看板見てきたんですけど

モリー:ああ、君も参加者なんだね~
    さぁ入って入って!僕はモリー、そしてこっちの二人はアンクとユーリ、君名前は?

田中:えっ、あっはい私は田中と申します

アンク、モリー:田中!?!?

田中:あっはい田中です

アンク:・・・その名前の前に何か付かないのか?

田中:名前の前ですか・・・
   うーん・・・昔クラスに「田中」って名字の子がたくさんいて
   僕は「手先が器用な田中」って呼ばれてましたね

アンク:長いな、そして俺の「葬制」やユーリの「断罪」や
    モリーの「不眠」のようにこう滾るものを感じない

モリー:うん、それなら田中のままでいいかな

田中:はい、そのほうが呼ばれ慣れてるのでありがたいです

ユーリ:何はともあれようこそ田中さん!
    この晩餐会の主催者断罪のユーリが君を歓迎しますよ!

田中:あ、ありがとうございます!

ユーリ:ここでは皆に狩りの話をしてもらうことになっているのです
    君は初めてだから、まずは私たちの話を聞いていて下さい
    さて、前菜の「狩りの話」といこうじゃないですか

ナレ:雨音が徐々に激しくなり始める中
   怪しげな四人の奇妙な晩餐会が始まった。

ユーリ:まずはアンクからお願いしますね!

アンク:じゃあ俺の狩りの話だ!
    今回の獲物は大変だった、夜の山奥での激闘
    久々に死を意識したよ

モリー:アンクが苦戦するなんて珍しいねぇ
    アンクよりも身体が相当大きかったの?

アンク:もちろんだ、俺よりも遥かにでかい大男だった

ユーリ:ほう、そんな相手に一体どうやって勝ったんですか?

アンク:いつもパワーで押し切る俺も、今回ばかりはそのやり方が通じないとすぐにわかった。
    お互いの力と力の殴り合いでも十分互角だった。
    だが、いつも体のでかさで有利を築いていた俺にとって、体格差がある相手は本当にきつかった!
    夜の森で視界もはっきりしない中、たまたま視界の端に崖をとらえることができたから
    とっさの判断で崖を使ったのさ!
    逃げるように見せかけて奴が勢いよく追ってきたところをひらりと躱し
    後ろの崖にドン!ってな
    相手は即死だったぜ!

田中:崖にドン!?
   痛そうですねぇ・・・

ユーリ:アンクにしては珍しい狩り方だ
    近くの地形を利用した戦法なかなかやりますね

モリー:へぇ!アンクにしては知的だねぇ
    頭を使うこともできるんだねぇ

アンク:失礼な!
    俺はこう見えても知的な面もあるんだぜ?
    舐めてもらっちゃあ困るぜ?

モリー:単純に頭の良さなら僕のほうが上だよ?
    今回の僕の狩りは実に知的だったよ!

アンク:ずいぶんな自信だな!
    ならばその狩りの話を聞かせてもらおうか。

モリー:僕は今日不眠の名の通り寝ていないって言っただろ?
    そうなんだよ!
    今回の狩りはある時から寝ないで一睡もしないで行ったのさ!今回の獲物は僕より遥かに小さい小さい存在だった
    僕はそれに目を付けたその時からずっと機会を伺っていたのさ!
    時には手を差し伸べ時には厳しく僕という存在がなくては何もできなくなるくらいまで
    ひたすら待ってから僕は寝ないでずっと観察し昨日の晩遂にその機会が訪れたんだよ
    長い時間がかかったけど、狩るのは一瞬だったね。
    最後の一押しは優しくしたつもりだったんだけど、すんなりと終わってしまったよ。

田中:楽し気な口調なのに、内容が怖いですね。

ユーリ:実にモリーらしい静かな中に潜む狂気が
    垣間見えましたね
    素晴らしい!

アンク:明るいふりして相変わらず陰気な奴だな。

モリー:陰気とは失礼な!
    これは芸術さ!最高のエンターテイメントさ!

ユーリ:いよいよ私の番ですね
    今回の獲物の名前はクミ、リック、アンダー、サラ
    主にこの四人でしたね。
    他の方の話を始めたらきりがない
    この四人はすぐに見つけることができました
    人気のない商店の中で皆一か所に固まっていたんで、さくっとね。
    実に気持ちの良い瞬間でした。
    皆数秒前まで私にかられるとは夢にも思っていなかったでしょう
    驚きを隠せない様子が実に素敵でした!!!

田中:一瞬のうちに四人も!?
   凄い・・・

モリー:やっぱりユーリには芸術的センスがあるね
    僕とおんなじだ!

アンク:一気に四人とは驚いた!
    ユーリはやっぱりすげぇな!

ユーリ:さて、次は新人くんの番ですね
    どんな話が聞けるか実に楽しみだ!

田中:私ですか!?
   でも皆さんのように話なんて

ユーリ:もちろんです!
    この晩餐会に参加した以上、あなたも狩りの話を話す義務があります。
    ・・・話すことがない、なんてことはないですよね?
    もしそうだとしたらここから何事もなく帰れるなんて思わないほうが良いですよ?

田中:すいません!あります!話あります!
   ただ、私皆さんのように話が上手くないので、ご期待に答えられるかどうか・・・

モリー:大丈夫!僕たちそんなの気にしないからさ。

アンク:そうだぞ!皆最初はそんなもんだ。

ユーリ:大丈夫ですよ
    あなたの感じたままを話してください

田中:では私の狩り?の話を
   皆さんこれ見てもらえますか?

ナレ:田中は胸元のポケットから、一枚の紙を取り出した。
   中には※(こめじるし)がいくつも書かれ、穴抜け状態になった文字列が書かれていた。

ユーリ:??これはなんですか?

田中:私の獲物の名前です。
   どうしても公表することができないので、暗号化されているんです。

ユーリ:ほう、なるほど・・・
    私にはこの暗号の意味がわかりましたよ!
    モリーもアンクもわかりますよね?

モリー:ああ、そういうことか
    わかったよ!

アンク:俺にもわかった!
    簡単だな!

田中:皆さんわかるんですか!?
   凄いです、さすがです!

ユーリ:まぁこれくらいは当然ですね
    さて話を聞かせていただきましょうか

田中:どういう風に話せばいいのかな
   えっと、彼女を周囲から切り離した時最初はとても怯えていました。
   私は怖がらないでと言って近づいたのですが、彼女は逃げるばかり。
   そこで私は服を脱がしてあげました。
   綺麗な白い肌があらわになったとき、私は興奮を抑えきれませんでした!
   ・・・次に気がついた時は、狩ってしまった彼女がそこに横たわっていました。

ユーリ:ほう、これはなかなか
    名前を聞いたときはどうかと思いましたが、田中さんあなたはセンスがありますね!

モリー:初めてでここまでできるとは
    やるねぇ~

アンク:これは大型新人登場だな!

田中:本当ですか!?
   喜んでもらえてよかったです!
   ・・・あのぉすいません、ちょっとトイレに行ってきてもいいですか?

ユーリ:ああ、トイレならそこの角を左に曲がったところにありますよ

田中:ありがとうございます

ナレ:田中は暗い酒場の奥に消えていった
   足音が雨音より小さくなるまで静寂が続いた

ユーリ:さて、ここからは初めての方には刺激が強すぎますね
    田中さんがいない間にそろそろ判決を下しましょうか。

ナレ:雨音が空間を支配する静寂の中。
   ユーリの声があたりに響いた。

ユーリ:この断罪のユーリの今回の判決は
    ・・・カレーライスぅううう!!!

モリー、アンク:うぉおおおおおおお!!!

モリー:やっぱりそっちのほうが、なじみ深いよね!!

アンク:そうだな!カレーうどんも最高なんだが
    まずは定番のカレーライスだよな!

ユーリ:フフッ、気に入ってもらえてよかったよ!
    今回一番の決め手は田中さんだよ!

アンク:やっぱりな!
    頭脳派にジョブチェンジした俺にはすぐわかったぜ!
    まさか初っ端から俺たちの求める食材を持ってくるとはなーすげぇなあいつ!

モリー:うん!本当に期待の新人だね!

ユーリ:いやぁ本当にすごい!
    初めてとは思えない出来だった!
    あの人呼んだのは誰?

モリー:??呼んだのはユーリでしょ?

ユーリ:えっ違うよ?
    じゃあ熊っつぁん?

アンク:俺も違う!
    というか普段の呼び名で呼ぶなよー萎えるわー

ユーリ:いやぁいよいよ本番だと思うと気が抜けちゃって
    でも本当に誰だろ?

モリー:ねぇねぇそれより悠ちゃん早く早く!

ユーリ:もりりんは食いしん坊だなぁ
    はいこれが持ってきたものだよ!

ナレ:ユーリは色とりどりの粉末が入ったビンを四つテーブルに取り出した。

モリー:おお!カレーのスパイスだぁ!
    スパイスの名前を上手いこと区切って
    人の名前っぽく表現するのは良かったよ!

アンク:これは楽しみだな!
    次はもりりんだな

ナレ:モリーは色鮮やかな人参と
   土がついたままのじゃがいもをテーブルの上に取り出した。

モリー:うんそうだよ!
    寝る間も惜しんで観察したり語り掛けたりしたんだよー
    頑張ったんだけどバレバレだよね
    アンクはシカ?イノシシ?
    じゃなさそうだよね

ナレ:アンクは大きくずっしりとした
   熊の手をテーブルの上に取り出した。

アンク:どうだ!驚いたか!
    俺は今回熊と戦ったんだ!

モリー:うわっすご!でか!

ユーリ:熊とか予想外だよ!
    流石に強すぎるよ!
    ってか熊っつあんは本当の意味で狩りだよね

モリー:さぁ早く早く!
    こっからが本番だよ!

   「かっこいいキャラでかっこいい口調でまるで殺し屋のように
   成果を報告しながら食材を集めてきたら料理も食事もより楽しそう」

   っていうユーリの案は凄いね!
   本当に楽しみ!こういうのやった後だと達成感とか高揚感があるよね!

アンク:うんうん!
   「最初に似た材料を使う二つの料理を提案して
   各々それに見合った食材を調達し、最後に部長の悠ちゃんが決める」

   っていうのも昔あったテレビ番組みたいで面白いよな!

ユーリ:我ながら考えてよかったよ!
    僕ら料理超研究サークル!
    初の試み大成功!
    もりりんの言う通り普通に食べるよりおいしそうだよ!
    あとは田中さんのお米だね!
    あの話し方から察するに相当良いお米だろうね!

アンク:田んぼから刈り取るのを、周囲から切り離すと例えて。
    もみ殻を服と表現するなんて斬新だな!
    白いお米を女性の柔肌に例えたのもセンスある!

モリー:それに※の暗号も良いね!
    何か隠してるように見せておきながらのそのままお米!

ユーリ:本当にねぇ!
    近所のコンビニでパックご飯を買わなくてよかった!

アンク:もし田中が来なかったらルーだけになったのか!?
    そんな緊急事態が回避できて本当に良かった!
    ライスなしのカレーは肉なしの牛丼と同じだからな!

モリー:熊っつぁん、その例えなんだか古いよー
    オッサン臭いよ~

三人:はっはっは!

ユーリ:ああ!僕も我慢できなくなってきた!
    早くカレーを早くカレーを作って食べたい!
    皆頑張って持ってきたから絶対美味しいよ!
    楽しみすぎるぅううう!

アンク:俺もだよ悠ちゃん!
    熊の手入りの特別カレー!
    ヨダレがぁああああ!

モリー:僕の人参とじゃがいもも忘れないでよ!
    絶対さいっっこうだよおおお!

ナレ:カレーに脳内を支配された三人が奇声を上げる中
   田中がトイレから帰ってきた

田中:なんですか皆さん
   私がいない間に楽しそうな話をしてますね
   それになんだか雰囲気が違うような・・・

ユーリ:ああ田中さんお帰りなさい!
    今ちょうどあなたの話をしてたんです!
    皆あなたの持ってきたものを楽しみにしているんですよ!さぁ早く!

田中:??私何も持ってきてませんよ?

ユーリ:え?お米持ってきてないの?
    さっきあんなに事細かに話してたのに?

田中:お米??
   ここって「人を狩ってきた話を共有するところ」じゃないんですか?
   前段階で経験を話して本番でそのノウハウを共有するんじゃないんですか?

ナレ:ユーリは田中に気づかれないように「刺激したら何されるかわからないから穏便に!」
   と、二人に静かに耳打ちをした。

アンク:狩りって見てそっちを想像しなさった!?

モリー:ちょっと思考がわからないよ・・・

田中:狩りといえば人ですよ?
   僕らの組織だとそれが当たり前です。
   僕は早くこの話をしたくて誰かと共有したくて
   場所を探していました。
   そしたらここを見つけて、皆さん逆に何を考えていたんですか?

ユーリ:えっそれは食材

田中:食材???
   流石に僕でもそんなことは考えませんよ
   ちゃあんと処理してきましたから
   皆さんもしかして処理してないんですか?
   だめですよそれじゃあ足がつきますよー

ユーリ:今から食材の処理はするんですが

田中:やってないんですね?
   がっかりです、あんなに堂々としてるし暗号も解いたと言うもんだから
   後処理はしっかりしているものとばかり
   あなたたちのうち誰かが捕まれば
   私の足がついてしまいますね

アンク:捕まる??足がつく??
    えっ待ってくれよ!

田中:私が席を外している間に十分時間はあったでしょう?

モリー:こうなるってわかってたら真っ先に逃げたのに・・・!

田中:では本番の開始ですね
   最初は抵抗がありましたが、皆さんの意見を参考にしてもよさそうですね
   そうすれば食材が三つに増える・・・!
   この「手先が器用な田中」その名の通り料理も得意なんですよ!
   今夜は楽しい晩餐会になりそうだ!!!

ナレ:最初の頃は静かだった雨音は
   いつしか雷を伴い激しく屋根を打ち付けている
   彼らの晩餐会は今、始まったばかりだ

END

 

 

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