第13話 街を護る者

俺たちは戦いに備え作戦会議を始めた。

「まず相手の戦力だけど、オル一家の連中は三人ともなかなかやり手だよ。
あたいらと互角かそれ以上ってところだね。
だからこそ、今回の戦いでは連携が必要だよ」

「連携?」

俺たちが今まであまり意識したことがない言葉だった。

「ああそうさ! 連携さえ意識できれば実力以上の相手に勝つことだってできるのさ!」

コトが誇らしげに胸を張った。

「ちなみにその連携ってどうすれば?」

「本当はあんたら自身で見つけてほしいんだけど、今は非常時だから仕方ないね。
ラルフとあたいらの四人で敵をかく乱しする。
たとえ攻撃が効かなくても攻撃を止めずにね」

「攻撃が効かなかったら意味ないじゃないか」

「大丈夫さ。
アジトの近くに大きな落とし穴を用意しておくからそこに誘導してくれればいいさ。
そして落とし穴にはまったところ確保ってわけさ」

「そんなにうまくいくかな?」

「やってみなきゃわからんさ、あとリンは念のために近くの物陰に潜んでいてくれ。
もしもあたいら全員がやられそうになったら意表を突いて攻撃してくれ。
幸いあんたらはファイス以外存在がばれていないからね」

「わかった! 隠れている!」

「そしてファイスはアジトにいる皆を守っていてくれ。
応急処置はできたとはいえケガ人達を危ない目に合わすわけにはいかないからね」

「了解した」

「本当にこんな簡単なことでいいの?」

「ラルフ、これは簡単なことかもしれないけど大事な事さ。
意識して戦ってみればわかることさ」

作戦会議を終えた俺たちは夜が来るのを待った。
そして夜も更け月明かりが辺りを照らし始めたころ、建物の外から物音が聞こえた。

「遂におでましってわけかい!
さっき話し合った作戦を忘れずに、皆行くよ!」

俺たちが外に出ると、大きめのこん棒を握りしめてこちらに向かってくる影がいた。

「昨日見張りがいるって聞いたから俺が直接見に来てみたら、
ずいぶん大勢で見張りをしてるみたいだな?」

俺たちに気づいた体の大きいオーク族の男が話しかけてきた。

「オル! 今日はあんた一人でおでましかい?
もうこそ泥みたいなことは止めたらどうだい?」

「コト! お前は相変わらず説教くせぇやつだなぁ。
奴らが来て街がめちゃくちゃになって、親分が死んじまってから俺はなぁ自由にやるって決めたんだ!
だからよぉ邪魔しないでとっとと金目のものと食料をよこしな!」

「あんた自分が何やってるかわかってんのかい!?
親分と一緒に守ってきたこの街をあんたが壊してどうすんだい!?」

「その親分が居なくなっちまったんだぞ!
もう街を守る必要なんざないさ!」

彼の血走った目はもはや正気ではなかった。

「話は通じないってわけかい。
仕方ないね、みんな作戦通りいくよ!」

「かまわねぇ!」

両者の掛け声とともに戦闘が始まった。
手筈通り俺達は一斉に攻撃を仕掛ける。

「お前ら雑魚がいくら束になったってどうってことないさ!
おらよ!!」

俺たちの攻撃はほとんど効かずに
オルの一振りにはじき飛ばされてしまった。

「お前らは相変わらず弱いな、ついでにそこの人間もな!」

「まだまだこれからだ!!」

攻撃が効かずとも誘導できればいい、そのことだけに意識を向け攻撃を続けた。
俺たち四人の攻撃をオルは難なくさばききっていたが、攻防が続く中、徐々に疲れが見え始めている。

「はぁ・・・はぁ・・・お前らいい加減しつこいぞ!
それにそこの人間! 勇者とかいうやつらと比べると弱すぎるが、体力だけはあるみてぇだな」

「そいつはよかった・・・おかげでここまで追い詰められた!」

「なんだと? おおっ!?」

先ほど仕掛けていた落とし穴にかかり、オルは足を踏み外した。
急ぎで作ったのではまるほどの深さはなかったが、体勢を崩すのには十分だった。

「どうだい? オル
少しは効いたかい?」

「こんな姑息な手を使いやがって!
ふざけるなぁ!!」

「ぐはっ!」

オルが再び体勢建て直し突撃してこようとしたその時
物陰に潜んでいたリンがオルの頭にこん棒を振り下ろし、その場に倒れこんだ。

「リン! 助かったよ!」

「あんたよくやったね!」

「ようやくあたいも活躍できたね!」

リンは満足げに微笑んだ。

戦いの後、気絶したオルが目を覚ますころには辺りは明るくなっていた。

「俺は、負けたのか?
いくら多勢に無勢とはいえこんな雑魚どもに・・・」

「あんたをなんとかするには数で押すしかなかったのさ、すまないね」

「少しは落ち着いたようだからコト達それにオルにも話しておきたいことがあるんだ」

俺はコト一家とオルに旅の目的を話した。

「人間と魔族の戦争と魔王様盗伐が奴らの目的・・・そいつは冗談だとしても笑えないね。
現にこの街にも人間に対する不信感を募らせてるやつもいるしそれがもし広まっちまったら・・・」

俺の話が終わると、コトが苦い表情を浮かべた。

「ああ、だから協力してほしいんだ。
オルはどう?」

「どうやら俺たち一家同士で争ってる場合じゃねぇみたいだな」

「オル、やっと正気に戻ってくれたね」

「恥ずかしい話、気絶してた時に夢に親分が出てきたのさ。
『オル! てめえ何やってんだ馬鹿野郎!!』ってな感じですごい剣幕でよぉ。
それに今のラルフの話を聞いたらいつまでも馬鹿な事やってる場合じゃねぇって思ってな」

オルは先ほどまでの血走った目ではなく、力強く澄んだ目をしていた。

「なぁラルフ、とりあえず俺たちはどうすればいい?」

「コト一家とオル一家の皆にはこの街を守っていてもらいたい。
ケガ人も全員完治したわけじゃないし、国王のことだから戦争を起こすためにどんな手を使ってくるかわからないからね」

「わかった、うちの連中にもそう伝えておくよ」

オルが一旦アジトに帰ったあと、俺たち荷造りをして街を出ることにした。

「コト、ケガ人の治療法に関してはメモを残しておいてから、参考にしてね」

「あんたらにはずいぶん世話になったね、この街のことはあたいらに任せて勇者どもに一発ぶちかましてやってきな!」

「ああ、もちろんさ!」

俺たちはコト一家に別れを告げた後、オル一家のいるアジトを訪れた。

「もう行っちまうのか、あんたらには世話になったな。
そうだ! ゴブリンの娘、リンって言ったっけか」

「あたいに何かよう?」

「俺を正気に戻してくれたお礼にこいつをもらってくれないか?」

オルが鎖につながれた一匹の魔物を連れてきた。
植物の球根のような胴体に二本の足と尻尾がついており、牙の生えた狂暴そうな顔をしている。

「オル! もしかしてこの子スクイッグ!?」

「そうだ、さすがにゴブリン族のお前なら知ってるよな!」

「リン、スクイッグって何なの?」

「スクイッグはね。
見ての通り植物の球根に顔と足が生えた魔族で狂暴な性格なんだけど、昔からゴブリン族にとってのよきパートナーだって伝えられている、ゴブリン族にしか心を開いてくれないって言われている魔物なんだ。
あたいの村近くには一匹もいなくて見たことなかったんだけど、昔から話だけはよく聞いていたんだ!」

「俺たちが街の外に出かけたとき、弱ってるこいつをたまたま見つけてな。
何かの役に立つかと思ってここに連れてきたんだが、暴れまわって困ってたんだ」

「あたいに任せて!」

リンが手を伸ばすと、先ほどまで鎖につながれ暴れていたスクイッグが落ち着き始めた。
しばらくすると暴れることもなくなりリンにじゃれつく様になった。

「俺たちが散々手を焼いたこいつをこんな簡単に手なずけるなんてな」

「これからよろしくね! スイ!」

「ガウ!!」

スクイッグのスイが新たに仲間に加わり、オルに別れを告げた後。
俺たちは街を出発した。

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