第11話 街外れの一戦

魔王城から出発した後、俺たちは魔王様からもらった地図をもとに、ハーニルの街に向かうことにした。
街へ向かうには、街道を通る必要がある。
ハーニルは多くの魔族が一緒に住んでいる街だ。
様々な種族が住んでいるので、日夜様々な情報が飛び交っている賑やかな街らしい。
まずは情報収集からということでこの街に向かうことにした。

「なぁラルフ、ちょっといいか?」

ファイスさんが唐突に話しかけてきた。

「どうしたの? ファイスさん」

「それだよ! そのファイスさんっていうのやめてくれないか?
これから冒険する仲間なんだし、普通にファイスでいいよ! アオイもね」

「わかったよ。
じゃあ、ファイス」

「私もファイスって呼ぶわね」

「あたいは元からファイスって呼んでるから大丈夫だ!」

「おう!」

他愛のない話をしながら街道を歩いていると街が見えてきた。
街の入り口に人影が見える。

「おい! そこのあんたたち! ちょいと待ちな!!」

声をかけてきたのは犬の頭に人の身体を持つコボルト族の少女だった。

「人間は立ち入り禁止だよ!」

「ちょっと待ってくれ! 人間が入れないなんて聞いてないぞ!」

「問答無用だよ! 武装もしてるみたいだしさては勇者ってやつらの仲間だな!
そこのゴブリンもゾンビもこいつらの仲間ってことかい?
じゃあ遠慮はいらないね!
お前たち!こいつらとっとと追い返しちまうよ!」

コボルトの少女の掛け声とともに、草陰から新たに細身と巨体のコボルト二人が現れた。

「待ってくれ! 話を聞いてくれ!」

「なに言ってんだい! 聞くことなんて一つもないよ!」

どうやら落ちついて話を聞いてくれる状態ではないらしい。

「わかった、急に戦うことになったけど皆もいいかい?」

後方からリンとファイスの答えを聞き、俺は戦闘態勢に入った。
今現在戦うすべがないアオイを守る形となった

「いい覚悟だ!じゃあ、あたいらからいくよ!
ルー! ボート! あいつらにあたいらの力見せつけてやんな!」

「「了解ですぜ! コトのあねさん!」」

コトと呼ばれたコボルトの少女の掛け声とともに、三人が距離を詰めてきた。
あっという間に距離を詰められ、各々が手に持った曲刀を振りかぶる

「くっ!!」

俺はとっさに護りの短剣で攻撃を受け止めたが、あまりの力に抑えるのがやっとだった。

「まだ小さいのに、なぜこんなに強いんだ!?」

「違うね、あんたが弱いんだよ。
もしかしてこうやって戦うのは初めてかい?」

「くそっ!」

実戦は初めてだったので、俺は反論することができなかった。
ファイスは魔王様からもらった槍で、リンはこん棒でそれぞれ受け止めたが、俺と同じで押されているようだ。
コボルトたちは身の丈ほどもある曲刀を巧みに操り攻撃を仕掛けてくる。
俺たちはそれを必死に受け止める事しかできなかった。

「あんたらさっきからあたいらの攻撃を受け止めてばかりじゃないか!
さすがに可哀そうだからチャンスをやるよ!」

そう言って三人は攻撃一旦止め、後ろに下がった。

「こっちからは攻撃もしない、この曲刀で反撃したりもしない。
だから好きなように攻めてくるといいさ!
もしあたいに曲刀を使わせたら、あんたの話聞いてやるよ!」

「なんだと!? ふざけるな!」

俺が怒りに任せ突撃しようとしたとき、ファイスが俺を引き留めた。

「あんな安い挑発に乗ってはいけない、冷静になるんだ。
俺もあそこまで馬鹿にされたら腹は立つ。
だがやつらが調子に乗って油断している今だからこそ、冷静に対処するべきなんだ。
魔王様に教わった基本に忠実に戦おう!」

「わかったよ、ファイス」

ファイスが落ち着いていてくれたおかげで、俺は冷静になることができた。

「あんたたち! さっきからなにこそこそ話してんだい!
待ちくたびれちまうよ」

「あねさん~、あいつら弱すぎて話になんないですぜ!」

「逃げるための作戦でも話し合ってるんじゃないんですか!?」

三人はしびれをきらしこちらから攻めるのを催促し始めた。

「逃げはしないさ。
さぁ、行くぞ!!」

俺は短剣を手に握りしめ一気に距離を詰めた。

「甘いね!」

最初の一振りはかわされた。
続けて何回も攻撃を続けるが毎回直前で避けられてしまう。
俺の攻撃は空を切るだけで一向に当たる気配がない。

「やっぱり、あんた実戦で戦うのは初めてだね
攻め方が予想通りなんだよ。
だからあたいは予想通りに避けてるだけさ、その繰り返し。
誰かに教わったままの動きをしてる攻撃は、あたいには当たらないよ!」

「なら、これならどうだ!!」

俺は今までの攻撃とタイミングをずらし、攻撃を仕掛けた。
うまく意表を付けたらしくコトは曲刀を使ってとっさに俺の攻撃を防いだ。

「っ! なかなかやるね、あんた。
今の一撃は予想できなかったよ。
約束通りあんたの話、聞いてやるよ」

そう言ってコトは、曲刀を納めた。
俺は魔王様の使いとしてこの街に用があることを話した。

「あんたらが街を襲った勇者の仲間じゃないことはよくわかったよ。
戦ってわかったけど、奴らと比べるとあまりにも力の差がありすぎるしね。
勢いで疑って悪かったね」

「悔しい理由だけど、信じてくれてありがとう」

ハーニルの街は数日前勇者たちの襲撃にあったらしい。
けが人もたくさん出てしまったので、街に入るものを制限していたのだとコトは教えてくれた。

「でもあんたらがいたところで、この荒れ放題の街はどうにもできないよ。
もしまた勇者の奴らが襲ってきたって、あんたらじゃ勝てないよ」

「俺たちは、戦いに関してはまだ弱いよ。
でもけが人の手当てを手伝うことくらいはさせてくれないか?」

「今はちょうど人手が足りないところだったから助かるよ!
でも肝心の医者もケガしちまってね・・・」

「ようやく私の出番ってわけね!
ここは元看護師志望の私に任せなさい!」

ずっと後ろにいたアオイが自信ありげに声を上げた。

「看護師ってなんだい?」

「簡単にいうと、お医者さんってことになるのかしら」

「まったく戦えないのかと思ったら、あんた医者なのかい!?
助かるよ! 代わりに皆を診てやってくれよ!」

「ええ、もちろんよ!」

コトのお願いにアオイは笑顔で答えた。
俺たちはこうしてハーニルに足を踏み入れた。

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