第10話 魔王城からの始まり

魔王様との特訓が始まって数日が経過していた。

俺たちは皆ほとんど実戦経験が無かったため
基本的な戦い方や旅の注意点等を魔王様から教わった。
猶予が無い中俺たちは基本的なことを覚えるのに必死だった。
旅をする際の注意事項から食料の確保、野宿の方法等々
役立つ知識をたくさん教わることができた

そして今、魔王城の地下にある薄暗いホールで、俺たちは椅子に座り魔王様と向き合っていた。

「我が教えられる基本的なことはこれですべて教えた、ここまで来ればもう旅に出ても問題なかろう。
では卒業証書代わりとしてお前たちにこれを渡しておこう」

魔王様は本を四冊取り出し俺たちに配った。
本の形はどことなくセルリタの勇者様に似ている。

「魔王様、この本はいったいなんですか?」

「この本は異世界のゲームに出てくる”ステータス画面”の役割を果たす『姿見の本』だ。
簡単に言うとお前たちの今の能力を確認することができる本だ。
本の表紙に自らの手をかざし念じると、本に自分自身の能力や情報が反映されるという代物だ。
何にしてもまずは己自身を正確に知ることが大事だからな」

「今は手元にないけど、この本なら私も『君たちの冒険に役立つと思うよ!』って国王からもらったわ!」

アオイが持っていたなら勇者たちも持っているのだろう。

「さぁお前たち手をかざしてみるがよい」

各々渡された本を受け取り表紙に手をかざす。
すると本の表紙に文字が浮かび上がりそれぞれの名前が刻まれた。

「うむ、問題ないようだな。
では次に表紙をめくって見せてくれないか」

表紙をめくるとプロフィールと書かれた項目があり、色々と事細かに俺の情報が書かれていた。
俺たちはそれを魔王様に見せた。

——–

名前:ラルフ
性別;男
年齢:15才
職業:村人
武器:護りの短剣
能力:全体的に平均以下の能力値ですが、生命力が高めです。
スキル:なし
称号:ラントリール村の夢見る子
詳細情報:ラントリールの村の少年、夢見る子。
特別な力は何もない。

名前:アオイ
性別;女
年齢:18才
職業:元僧侶
武器:なし
能力:全体的に平均以下の能力値ですが、精神力が高めです。
スキル:なし
称号:元僧侶
詳細情報:元勇者パーティの少女、元僧侶
僧侶の力はほとんど残っていない。

名前:ファイス
性別;男
年齢:23才
職業:ゾンビ
武器:なし
特徴:全体的に平均以下の能力値ですが、知力が高めです。
スキル:なし
称号:兵士のゾンビ
詳細情報:元兵士の青年、激戦の末ゾンビとして蘇る。
生前の筋力は失われている。

名前:リン
性別;女
年齢:15才
職業:ゴブリン
武器:形見の棍棒
特徴:全体的に平均以下の能力値ですが、力が高めです。
スキル:なし
称号:ゴブリン族の少女
詳細情報:ブコ村出身の少女、村を失った悲劇の少女。
体格は小さい。

——-

「各々自分の情報を見てもらえたならわかると思うのだが、お前たちはまだ全体的な能力や経験値が低い。
今はまだ戦闘の基礎を学んだ程度ではすぐに強くなれないからな。
今後実戦経験を積めばおのずと成長できるだろう」

各々の能力を知った後、魔王様との今後の作戦会議が始まった。

「まずお前たちには魔族や人の住む村を巡り、勇者や国王の手下の被害が出ていたらその対処をしてほしい。
色んな魔族や人々と関わりを持つことにより、経験も増え力もついていくだろう。」

身近な問題から解決しつつ、徐々に力をつけて欲しいという魔王様の考えだ。

「旅の途中で各地にいる四天王の城も見てきてほしい。
今回の件で世界各地で問題が発生している可能性が高い。
我はこの世界の魔力の均衡を保つためここから離れることは出来ぬのでな、頼んだぞ」

魔王様の直属の部下には四天王と呼ばれる者たちがいて、各地を守護していることも教えてもらった。

「いよいよだな、お前たち我の前に並んでくれるか?
最後に一人一人に伝えたいことがある」

「まずはリン」

「はい!」

俺たちが並び終わると魔王様がリンの名前を呼んだ。

「ブコ村の者たちを救うことが出来なかったのは本当に悔しい出来事だった。
だが、めげずにこうして力になろうとしてくれたことを我は本当に嬉しく思う。
ゴブリン族は元来、知能も力も低くあまり戦闘に向いていないと言われているが我は全員にそれが当てはまるとは考えていない。
その力と明るさを持って皆の道を切り拓いてあげてほしい!」

「あたい難しいことはよくわかんないけど頑張るよ!」

リンは棍棒を掲げ元気よく答えた。

「次にファイス」

「はい」

「一度殺された後、ゾンビに転生するというのは想像を絶する体験だったと思う。
初めて城にやってきたとき急に幻術を時驚かせてしまって悪かった。
あの時お主に言ったように、元人間で今は魔物のお主は貴重な存在なのだ。
自我を保ちつつこの城まで来たお主の意志の強さ、そして幻術を操れる魔力の高さには今後も期待しているぞ!」

「この身が生ける屍となっても、心は世界の平和を望む兵士です!」

ファイスさんは手を胸に当て力強く答えた。

「そしてアオイ」

「はい」

「急に異世界からやってきて、共にいた仲間に裏切られ本当に寂しい思いをしたと思う。
仲間の蛮行を見過ごさず、孤独になってまでこの世界の事を考えてくれたことを本当に嬉しく思う。
国王のように強い装備はあげられないが、その代わり魔使いのペンダントを大いに活用してくれ。
精神力と慈愛の心でこれからは皆の支えになってほしい!」

「異世界での冒険を夢見た私が、まさか魔王様の仲間になるなんて想像が出来ませんでしたよ」

アオイは苦笑交じりに答えた。

「最後にラルフ」

「はい」

「ごく普通の村の少年が日常を壊され、助けになってくれるはずの国王にも平和を破壊されるとはな。
本来なら自暴自棄になりかねない状況から立ち直り、仲間を集め今旅立とうとする勇気ある姿は勇者そのものだ。
これからは今までと同じか、それ以上の悲惨な光景を目の当たりにするかもしれない。
だが、自分を信じて付いてきてくれる仲間がいることを忘れなければ必ず道は開けるはずだ!」

「一人で村を初めて出たあの日から本当に色々ありました。
でも今は頼もしい仲間がいます! 勇者と国王を倒す日までどうか待っていてください!」

俺は決意を新たに答えた。

「では行くがよい! 勇者たちよ!
・・・うむ、これではややこしいな。
では『魔王の使い』たちよ!
勇者と国王の脅威をこの世界から退け、平和に再びを!」

魔王様は、セルリタの勇者様が旅立つ時の国王のセリフと似てるようで違う言葉を俺たちにかけてくれた。
立場や名称は異なっているけど、俺たちの志は物語に出てくる勇者様と同じだ。
こうして俺たち『魔王の使い御一行』は魔王城を出発した。

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