第8話 再開と新たな旅立ち

【第8話】勇者に改心の一撃を!【朗読劇】

俺たちは王都カラストルを後にした。

王都から森までの間は道なりだったので、すんなりと進むことが出来た。
その間に国王の部屋から拝借した『村人の常識』を読んでみた。
書かれている内容はゲームの中での村人の役割や立ち振る舞いについてで、なんとアムラウス本人が自ら書いているものだった。
なぜこのような本を書いたのかわからないが、ろくなことは考えていないだろう。

辺りが夕闇に染まるころ俺たちは森に着いた。

「アオイ、ここで一旦野宿しよう。
前に来た時もここで野宿をしたんだ」

「前に来たときは確か、ファイスさんって兵士と一緒だったのよね」

「そうだよ、ファイスさんは襲ってきたキマイラの気を引き付けるためにおとりになって俺を逃がしてくれた。
後で行くよなんて言ってたけど結局来なかった」

ファイスさんの笑顔を思い出すと胸が苦しくなる。
あの時の俺に力があれば。

「・・・」

「せめて、ファイスさんの持ち物か何か見つかればいいんだけど」

何かあるのではないかと辺りを見渡した。

「あ、あれは」

地面に大量の血痕が付いている箇所を見つけた。
おそらくファイスさんのものだろう。

「村に帰ったらお墓の一つでも」

そのとき物陰からガサガサと音がした。

「またキマイラでもやってきたのか!? 今度はもうどうすることも出来ない・・!」

「誰の墓を建てるんだい? ラルフ」

半ばあきらめかけたそのとき音の主の声が聞こえてきた。

「ファイスさん!? そんな、なぜ!?」

夢を見ているのかと思った。
最後に分かれたときと変わらないファイスさんの姿が現れた。

「なんだラルフ? 人を化け物を見るような目で見て?
それとずいぶん見ない間になんだかたくましくなったなぁ」

「本当にファイスさんなの!? 俺、てっきり死んだんじゃないかって思ってた」

「あの時はな、私が必死に抵抗したらキマイラのやつは諦めて帰って行ったんだよ!」
だが、戦闘の最中足を怪我してしまっていてね、ここで休んでたんだ。
約束を守れなくて本当にすまない。
それで国王様は説得できたか? それに隣の・・・」

「じゃあ順番に説明するね」

王都で起きた様々な出来事について話した。

「あのキマイラを国王が・・・それに自ら城下町を襲わせたなどと、にわかには信じられん」

「ファイスさんは俺が説得に行っただけだと思っていたんだもんね。
信じられなくても仕方がないよ」

「なんだか途方もない話だよな、ゲームがどうとか世界がどうとか。
ただ、国王様のイタズラが度が過ぎていたことだけは間違いないみたいだがな
アオイちゃんもずいぶん苦労したみたいだね」

「ええ、別世界から来てこんなことになるとは思ってもみませんでしたよ。」

アオイは苦笑しながら答えた。

「それで俺たちは、今からいったん村に戻ろうと思ってるんだ。
ファイスさんはどうする?」

「そうだなぁ・・・」

ファイスさんは俺たちを見ながら深く考え込んだ後、口を開いた。

「もう道案内は要らないだろうが私も連れて行ってほしい。
やられてばかりではなく一泡吹かせてやりたいんだ!
だが、今王都に帰ったとしても、私一人にはどうすることも出来ないし
それに国王の野望が分かった今、君たち二人だけで旅をさせるのは心配だしな!
私で良ければ力になろう!」

「ファイスさんが来てくれるなら心強いよ」

「ありがとな、改めてよろしくラルフ、それにアオイちゃん」

俺たちは一晩休むと、ラントリールの村を目指し再び歩き始めた。
そして村にもうすぐ着くという辺りまで来たころ遠くからこちらに向かってくる一団を発見した。
その一団には見覚えがあった。

「父さん! それにアンナも!!」

それは遠くに行商に行っていた父さんと妹のアンナだった。

「ラルフ兄ちゃん!」

「ラルフか!? お前どうして村の外にそれにそっちの二人は?
そんなことより大変なんだ! 実は・・・」

そういって父さんが後ろに目を向けると三人のゴブリン族がいた。

「え!? どうしてゴブリン族がいるの!? ゴブリン族はブコの村から外にでることなんてめったにないはずなのに」

「その理由はわしから話しますじゃ」

三人のうち年老いたゴブリンが口を開いた。

「わしはブコ村の村長をしておるブンという者じゃ。
わしらの村はあなた方のラントリールの村から少し離れたところにあっての。
先日謎の三人組に突然村を襲われて命からがら逃げていたとき、たまたま通りがかったこの人らが助けてくれたのじゃ」

「そういうことなんだよラルフ、それで今から三人を村にかくまおうと」

「まさかゴブリン族の村にまで奴らが行ってたなんて・・・父さんの言う通りラントリールの村に戻ろう!
そこでまとめて話すから!」

俺たちは急いでラントリールの村まで戻った。
村に着くと俺は、急いで皆を呼び集めるよう村長に頼んだ。
集まった皆に軽くアオイやファイスさん、ブコ村の皆の紹介をした。

「皆集まってくれてありがとう。
今から話すことは信じられないことかもしれないけど、落ち着いて聞いて」

俺は王都での出来事、勇者の正体や国王の目的についてみんなに話した。
俺が話している間皆は唖然とした表情で話を聞いていた。

「ラルフよ・・・お主の言ってることが本当ならとんでもないことじゃ。
国王様の説得のためにおぬしに王都まで行ってもらったのじゃが、まさかその国王自身が黒幕じゃったとはな・・・」

先ほどまで真剣に聞いてくれていた村長が重い口を開いた。

「俺も信じたくないよ、でも事実なんだよ」

「おぬしが嘘を言っているとは思わん・・・思わんが・・・」

村長の疑念は晴れないようだった、この場にいるみんなも同様だった。

「ラルフ・・・父さんが見ない間にそんなに凄い経験をしてたんだな・・・」
「私、ラルフ兄ちゃんが嘘ついてるとは思えないけど、信じるのが難しいよ・・・」

父さんとアンナも驚きを隠せないみたいだ。

「あんたら人間の国王様のくだらない目的のせいで、おらたちの村は勇者とやらに襲われたってのかい!?」

体格の大きいゴブリン族のゴンさんが怒りを露わにした。

「落ち着いてくださいゴンさん! 俺たち人間とあなたたち魔族が争うことこそ国王の狙いなんです!
どうか、どうか抑えてください!」

「ゴンにいちゃん、少しは落ち着きなよ!
あたいたちがここで騒いだってどうにもならないよ!」

今にも暴れそうなゴンさんを抑えたのは、ゴブリン族の少女リンだった。

「リン、ありがとう
とりあえず当面の間はゴブリン族の三人をこの村でかくまってほしい」

「奴らはブコ村を襲ったあと、更に離れた場所に向かったらしいんだ。
だから大丈夫。
でも奴らを野放しにしておくわけにはいけないよね。
だから俺たちは、今から奴らを倒すための方法を探しに行くつもりだ」

「お主はまた、この村から出ていくというのか・・・
今度はそう簡単には帰ってこれない旅になるのじゃよ、それでも行くのか?」

村長は悲しそうにつぶやいた。
周りの皆も母さんも心配そうに俺を見つめている。

「皆、心配かけてごめん。
でも俺悔しいんだよ!国王を説得するって村を出たのに、結局その目的を果たすことなく帰ってきちゃって。
何もできなかった自分が情けなくて・・・だからこそ奴らと対等に渡り合えるようになりたい!
具体的な方法はまだわからないけど、今度こそ奴らを改心させてやりたいんだよ!」

「ラルフ君、一つ提案があるのだが。
もしかしたら奴らに対抗できる方法があるのかもしれぬ」

やっぱり考えなしに行くのは無理かもしれない。
そう思い始めた矢先に、ブンさんが思いがけない言葉を発した。

「えっ、それっどういうことですか?」

「魔王様じゃよ、魔王様なら力を貸してくれるかもしれん。
じゃが魔王様の城には魔族のものがいないと入れぬのじゃ、どうしたものか・・・」

「あたいが行く!
あたいがラルフの仲間になる!
そうすれば魔王様のとこにも行けるだろう?」

「リン!?」

「あたいはあたいたちの村を襲ったあいつらを許さないし、
このまま放っておいて世界の平和が乱れるのを黙ってみていることはできない!
でもあたい一人では無理だ、だからラルフについていく!」

「リンよ、まさかお前がこれほどまでの思いを抱えていたとはなぁ。
行くがよい、わしらブコ村の代表としてラルフ君や皆さんに力を貸してやりなさい。」

「ありがとう!」

「リンやこれを持って行きなさい」

ブンさんは、使い古された大きめの棍棒をリンに差し出した。

「これは! 父ちゃんの使っていた棍棒!」

「実はな、村が襲われたあの日逃げる最中たまたま見つけて拾っておいたのじゃ。
新しい傷があるが、それは・・・奴らに勇敢に立ち向かった証なんじゃろうな」

「村長、あたいこれ大事にするよ!」

リンは大事そうに棍棒を抱えた。

「ラルフ君、リンを連れて行ってもらっても問題ないだろうか?」

ブンさんは俺に振り向き言った。

「もちろんですよ!」

俺たち人間より力のあるゴブリン族が仲間にいてくれれば心強い。
色んなことがあったけど志が同じ三人の仲間が出来た。
少し前までは想像もできないことだ。

「村人に元僧侶に兵士と、それからゴブリンかぁ」

“セルリタの勇者”に出てくる勇者様たちとは見た目も実力も似ても似つかない組み合わせだけど。
俺にとっては本当に心強い仲間だ。

「ラルフ君、魔王様の城は我々のブコ村から北へずっと行った先にある。
リンや、くれぐれも気を付けてな」

「うん!」

ブンさんとリンは固く抱き合った。

「ラルフや、またお主の旅立つ姿を見送ることになるとはな。
今度は長旅になるだろうが村の事は心配せずに安心して行ってくるのじゃ。
それとアオイさんとファイスさんや、今までラルフがずいぶんとお世話になって、
さらに危険な旅まで同行させてしまい本当に申し訳ない・・・」

「いえ、村長殿。
私は自分の意志で彼に同行しているだけですので、謝る必要はありませんよ。
彼は私が守ります」

「私も自分自身の意思でラルフの仲間になったので心配する必要はありませんよ」

ファイスさんとアオイは力強く答えた。

「ラルフの仲間になってくれて本当にありがとう」

二人の村長が俺たちを見送ってくれた。
父さんも母さんもアンナも村の皆も見送ってくれた。

「「「「行ってきます!!」」」」

俺たち四人は皆に別れを告げ、村を出発した。

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