第5話 少年たちの出会い

勇者に改心の一撃を!

「これが王都・・・凄い・・・」

王都の門をくぐり中に入った瞬間。僕は思わず声に出してしまっていた。
ラントリールの村よりも遥かに大きい建物と数え切れないほどの人の数、
右を向いても左を向いても人がいて、皆の話し声が絶えず飛び交っている。

初めて訪れた王都カラストルの姿は想像以上のものだった。

「建物も売っているものも色々気になって仕方がないけど、僕は使命を果たさないと」

村では見かけることのない様々な建物に興味はあったけどそれらを一つ一つじっくり見ている余裕はなかった。
僕は国王様に会いに行くため王都の中でもひときわ大きいカラストル城を目指すことにした

お城の見た目は前に村長から聞いていたからすぐにわかったけれども
人混みにもまれながらの移動は初めてことでとても大変だった。

なんとか城門までたどりつくと門番らしき兵士が二人いて一人が僕に声をかけてきた。

「そこの君! 城に何の用かね?」

「あ、あの! 僕ラントリールの村のラルフって言います! 国王様に会いに来ました!」

「ラントリール? あんな遠い村から一体国王様に何の用だ?」

「実は村に怪しい奴らがやってきて、それでえーと・・・とにかくこれを読んでください!」

僕は村長の手紙を取り出した。

「確かにこれはラントリールの村長セルジュ老のサインだな、なになに・・・怪しい奴らが村を襲っただと?」

「そうなんです! それでそいつら三人は勇者一行を名乗っていてどうやら国王様の手紙と通行手形も持っていたみたいなんです!」

「三人だと? ついこの間四人組の勇者一行様なら国王様の命により旅立ったのだが・・・ちょっとここで待っていなさい」

門番は急ぎ足で城の中入っていきしばらくすると戻ってきた。

「国王様のお許しが出た、中に入りなさい」

門番はそういうと僕を案内してくれた。
城の中はとてもキラキラしていた。
床は綺麗な石でできていて壁には美しい絵が飾られていて
まさに物語に出てきた城そのものだった。
しばらく歩くと国王様の部屋にたどり着いた。
兵士がドアをノックし部屋に入ってしばらくたつと入るように促され僕は部屋に入り門番は部屋を出た。

「失礼します!」

僕は部屋の中に入ってその本の量に驚いた。
所狭しと置かれている本はどれも分厚く僕には読むことすらできそうになかった。
本が積み重なった所を奥へ行くと赤い生地に金の装飾がなされた服を着ている僕と同じくらいの男の子が夢中で本を読んでいた。

「あのぉ・・・」

恐る恐る話しかけると彼が急に振り向いた

「わぁ!! 僕と同じくらいの子だぁ!! やったぁ!!」

綺麗な瞳を更に輝かせながら彼は僕に抱き着いてきた。

「えっ!? ちょっと離して!」

僕が驚くと彼は手を放してくれた。

「あ、ごめんね、同年代の子に合うのは初めてでつい嬉しくて・・・僕はアムラウス・カラストル!
この国の王様だよ!アムって呼んでね! 君名前は?」

「僕はラルフ、ラントリールの村のラルフです」

「へぇラルフって言うんだ! ねぇねぇ僕と友達になろうよ!!」

「えっ!? あ、えっと、うん」

「この城の大人たちは何かイタズラでもしないとぜんぜん僕にかまってくれなくてつまんないんだもん!
君なら僕の気持わかってくれるでしょ?」

イタズラ好きの国王様とは聞いていたけど予想以上に元気で戸惑ってしまった。

「じゃあじゃあ!なにして遊ぶ? 僕はね”セルリタの勇者”の話をしたいなぁ!」

「セルリタの勇者様?」

「えっとね僕の前世の子がね読んでもらっていた本の名前!」

「えっ!? それってもしかして『人々の平和を脅かす悪い魔王とその手下たちを、異世界からやってきた勇者達が封印する物語。
』だったりする!?」

「なんだよ~ラルフも知ってるんじゃないか!」

僕は本当に嬉しかった。
国王様が僕と同じ前世の記憶をもつ子供だってことは聞いていたけどまさか夢の内容も同じだったなんて!

「じゃああの物語の本は”セルリタの勇者”ってお話なんだね!!
僕も君と同じだよ!前世の記憶があってその本を読んでもらってる夢を昔から見てるんだ!」

「本当に!? 僕たち似た者同士だね!! やったぁ!」

僕たちは固い握手をした。
初めて同じ境遇の人に会えて本当に嬉しかった。
アムなら僕の話を分かってくれるかもしれない。

「実は僕、国王様に用事があってきたんだ」

僕は話を切り出した。

「用事って? 君のところの村長さんの手紙の事?」

「そうなんだ、怪しい奴らがやってきて僕の村が荒らされてそれで・・・」

「それってコウイチ達のことだよね?」

「そうなんだよ! あいつら村の金品や道具を奪っていったりして
あいつらのやってることが勇者のすることではないってことは同じ夢を見てるアムならわかるよね?」

「えっ? ラルフは何言ってるの? コウイチ達のしていることは”勇者そのものだよ”」

理解してくれると思っていたアムの口から信じられない言葉が出てきた。

「どこが勇者そのものなの!? 盗賊と一緒でしょ!?」

「コウイチ達を盗賊呼ばわりするなよ! 僕の勇者様なんだぞ!」

アムが急に怒鳴ったので僕は面食らってしまった。

「ご、ごめん、でもどうして村の金品を奪うのが勇者の行動なの?」

「だって”ゲーム”だと序盤お金が足りないのは当たり前でしょ? 旅に出たら近くの村で金品を集めるのが当然の行動でしょ」

「げーむって何?」

「あぁそっかラルフは僕と同じ前世の記憶を持つ子供でも力が無いんだね
ゲームっていうのはね、コウイチ達のいた世界つまり僕たちの前世の子が生きていた世界にある遊びのことだよ」

「僕たちの前世のいた世界ってあいつらのいた世界なの?」

「それも知らないんだ、じゃあ説明してあげる。
僕はね、コウイチ達のいた世界に見る力を持ってるんだ。
ある日僕が世界を見ていたらゲームっていうおもちゃを見つけたんだ! 人が操作すれば画面の中の人物が自由に動く
素敵なもの! そのゲームの中でも特に人気が高いのが”セルリタの勇者”なんだ!」

途方もない話だった。
さっきは近くに見えたアムが急に遠い存在に思えてきた。

「でね、僕はそのゲームの内容が夢の子が見ていた本と同じことを知ってね、
このゲームをやりたい!って強く念じたらゲームの世界に入れたんだ!」

「ゲームの世界に入った僕が見つけたのがコウイチとマヤとケンジとアオイのパーティでね!
ゲームを通じて彼らの冒険を見るのは本当に楽しかった!
それで僕、我慢できなくなっちゃって彼らに声をかけたんだ
『僕のいる世界に来ればもっとリアルな冒険が出来るよ!来てみない?』って
そしたらみんな大喜びで行きたい!って言ってくれたんだ!」

「ちょっと待って! この世界に来たって悪い魔王も魔族もいないよ!?」

「うん、だからね僕が作ることにしたの」

「はぁ? 作る??」

予想外の答えに僕は唖然としてしまった。
アムはお構いなしに話を続ける。

「この世界も昔は”セルリタの勇者”のように魔王が暴れていたんだ。
でも今は魔王も魔族も大人しい、だから僕は”凶暴な魔族”を作ったんだ!
君も知ってるよね? 合成魔獣キマイラ! 遠くの山にしか生息していないやつらを兵士に連れてこさせ
僕の魔法で操ってるんだ!凄いでしょ!?
これはもう神様が僕にこの世界をゲームの世界に変えるように言っているとしか思えない」

「キマイラは君が操っていた・・・」

「あ、もちろん僕の命令だけを聞くようにしてあるけどね。
僕の命令以外では人を見つけ次第、好き勝手暴れてくれてると思うよ!
キマイラのような凶暴な魔族が現れれば人は魔族に恐怖するだろうし、魔族に対抗する勇者が現れれば魔王も黙っていないでしょ?
そうすれば人と魔族の間再び争いが起きるよね! しかも誰も国王の僕がやってるとは思わないだろうし、これで物語の再現ができるんだよ!
そして僕は安全なこの部屋から、彼らにかけた魔法で五感を共有することが出来るんだ!そうすれば実際に旅をしている気分を味わえるってわけ!
本当にゲームのプレイヤーになった気分だよぉ! どう? 最高でしょ!!」

信じられないような色んな情報が僕の頭の中をぐるぐるとかき混ぜていく
自分自身の想像のはるか上を行く出来事が起こっていた。
話を聞いているうちに徐々に怒りの感情が抑えられなくなってきた。

「あとね、彼らには身体能力が上がる魔法もかけてあるからまず負けることは無いと思うし、
万が一負けたとしても最後に泊まった宿屋から再スタートできるようにしてあるしね!
まさにゲームと同じだよね!
あっちの世界のゲームで慣れてるから冒険の方法はわかってるだろうしー君の話を聞く限りちゃんと冒険してるみたいで良かった!
でも王都をでる前にアオイがパーティを抜けちゃったのが残念だったなぁ。
まぁ回復役なんていらないくらい三人は強いからね!
あっ!そっかぁアオイが抜けたことは僕しか知らないから門番は君の話に出てくる賊がコウイチ達とはちがうやつらだと思って通しちゃったのか! これは失敗しちゃったなぁ」

アムは本当に楽しそうに話をしている。
まるで小さい子供が楽しい話を一生懸命話すような綺麗な瞳で、悪意のない笑顔で。

「お前は、自分のわがままのためだけにこの世界を巻き込むつもりなのか!? お前さえいなければ村が襲われることも、ファイスさんが
あんな目にあうこともなかったのに・・・!」

もはや感情を抑えることはできなかった。
国王だろうが関係ない。
目の前にいる奴はこの世界の敵だ。
僕は短剣を取り出し彼に襲い掛かろうとした。

「じゃま」

アムの言葉とともに僕の短剣は何かに弾き飛ばされ地面に落ちた

「僕が楽しく話している最中なのにどうして邪魔するの? まぁ君みたいな力もないくせに歯向かってくる雑魚なんか
もう興味もないけどね、せっかく仲良くなれると思ったのに残念だなぁ」

僕の必死の殺意も決意もあっけなく蹴散らされてしまった。

「ぅうああああああああ!!! くそっおおおおお!! どうして僕には力が、力が無いんだよぉっ!」

あまりの悔しさに僕は叫んだ
目の前に諸悪の根源がいるのにファイスさんの敵がいるのに
何もできない自分が情けなくて悔しかった。

「そうだよ、 君は弱いんだ。
僕は国王に生まれ変わり君はただの村人に生まれ変わった。
可愛そうに、その時点でもうどうしようもないくらい差はついているんだよね。
だから君は黙ってそこに座り込んでいればいいさ、そうすれば今から特別に面白いものを見せてあげるよ!
楽しみだなぁ!!」

彼の無邪気な笑い声が部屋中に響いた。

コメント