第2話 旅立ちは突然に

【第2話】勇者に改心の一撃を!【朗読劇】

悪夢のような出来事があった翌日、
村長から村の広場に集まるように言われた。

広場行くと、村中の人々が集まっていて皆固く口を閉ざし静まり返っていた。

それもそのはずだ。
昨日の偽勇者たちは、僕の家の他にも村中の家を荒らして回ったようだった。
奴らの力を前にただの村の住人である僕たちは敵うはずがなかった。

沈黙の中村長が口を開いた。

「皆に集まってもらったのは他でもない。昨日突如として村に現れた賊についてじゃ」

「村長! あいつら一体何者なんだ!?」

「私の家は食料もお金もほとんど持ち去られたのよ! これからどうすればいいのよ!」

「また奴らが来るかと思うと不安で眠れやしない・・・」

村長の発言を皮切りに皆が口を開き始めた。

「皆の気持ちはよくわかる、わしも皆と同じ被害者じゃ。
それに村の皆を守れなかったことが何より悔しくてな、わが身が老体であることがこんなに悔しいものとはのぉ・・・」

いつもは年齢を感じさせないほど元気な村長が、今日は生気を失ったように元気が無い。

「いつまでも嘆いていては仕方がない、これからのことを考えようぞ!
そのために皆に集まってもらったのじゃ」

「これからのことって言ったってこの状況でどうしろって言うんだよ! 奴らが何者かさえわからないのによぉ!」

村一番の力自慢のアレン兄さんが声を上げた。

「怪我をしているものの治療と、荒らされた家の片づけを村の皆でしようと思っておる。
それと奴らはの正体はわからぬが、勇者と名乗っておったのぉ。じゃがあのような下賤なやからが勇者であるはずがない」

「ただの盗賊にしては魔法を使っていたしな。そこらの盗賊がおいそれと魔法を使えるとは思えない」

「今は奴らが何者かはわからぬが、わしらのいのちが狙われなかっただけよかったと思うしかないのぉ。
じゃが奴らを野放しにしておいてよいはずがない。いずれほかの村にも被害が及ぶはずじゃ。
そこでじゃ、王都にいる国王様に直接合ってやつらの捕縛をお願いしようと思っておるのじゃが・・・」

「・・・でも村長、王都に行くってったって村の者は村長以外王都に行ったことはないんだよ。
村長はもう体が丈夫じゃないんだから王都まで行くのが大変だろうし・・・誰が行くってのさ」

道具屋のミザリーおばさんが渋々声を上げた。

「それに今の国王様は、先代が早くに亡くなって若くして王になったらしいじゃないの。
王都から来た人に聞いたらどうやら大の大人嫌いらしく、大人とはまともに取り合ってくれないみたいなのよ」

ミザリーおばさんの発言に村長は険しい表情になり考え込んでしまった。

「・・・そうじゃ! ラルフ、お主が王都に行ってきてくれぬか?」

しばらく沈黙が続いた後、村長が僕に話しかけた。

「どうして僕なの!?」

村長の急な発言に僕も皆も驚いた。

「お主ならば国王様とも年齢が近いから取り合ってもらいやすいじゃろう。」

「確かに僕は子供だけど、他にも僕と同じくらいの子はいるよ? なのになぜ僕なの?」

「それには理由があるのじゃ。
今まで機会が無く話したことが無かったのじゃが、どうやら今の国王様もお主と同じ”夢見る子”らしいのじゃ」

「えっ・・・国王様も僕と同じ・・・」

この村には僕以外に前世の記憶をもつ子はいない
だからこそ、国王様が僕と同じく前世の記憶を持つ者だったという事実には驚いた。

「お主がまだ物心ついて間もないころ、王都から来た行商人に聞いた話じゃから事実かどうかは定かではないが、
もし本当なら同じ境遇の者同士気が合うのではないかと思ってな」

「ちょっと話を勝手に進めないでください!」

僕の隣にいた母さんが口を開いた。

「村長の言うことももっともだと思います、でもこの子は昨日奴らにひどい目に合されたばかりなんですよ!?
それなのに今度は王都に行って来てくれだなんて・・・」

「マリーよ、お主の気持ちも考えず勝手に話を進めてすまんかった」

村長は申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえ、私のほうこそ取り乱してしまって」

再び沈黙が訪れた。

「母さん、僕なら大丈夫だよ! ひどい目にあったのは僕だけじゃないし
それにこれは誰かがやらなくちゃいけないことなんだ!僕国王様のところに行ってくる!」

これは僕に課せられた使命だと思ったし、それに僕と同じ境遇の国王様に純粋に興味があった。

「ラルフ・・・あなたは本当に強い子になったわね」

「おお! よく決心してくれた」

母さんと村長は僕に微笑かけてくれた。

「それで道案内なのじゃが、村から少し離れた検問所にいる兵士に頼んでみようかと思っておる
あそこには何人か兵士がおるはずじゃからのぉ、それに検問所までなら道も簡単じゃろう。
わしが今回の一件についての手紙を書くからそれを兵士に見せるとよい」

「うん、わかった。」

僕は深くうなずいた。

「皆今日は集まってくれてありがとう。
これから不安な日々が続くかもしれんがこういう時こそお互い助け合っていこうではないか
聞いてのとおりラルフには明日の朝一番に王都に向かってもらおうと思う。皆で吉報を待とうぞ!」

村長が話し終わると村の皆から拍手が上がった。

「大変な時だけど皆で力を合わせて頑張るしかないはね」

「ラルフ! 期待してるからな!」

「くれぐれも無理をするんじゃないよ」

皆が僕に声をかけてくれた
人々に期待されてながら旅立つ、なんだか勇者になったような気分だった。

――その晩僕は久々に【物語の夢】を見た。
いつもと同じ夢なのにいつもより温かい感じがした。

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