第1話 勇者が村にやってきた

【朗読劇】「勇者に改心の一撃を!」第1話【Vtuber】

ある朝
僕はドンっ!という乱暴な音で目を覚ました。

「一体何!?」

僕は慌てて音がした家の入り口に向かっていく。

「なんですかあなたたち! 辞めてください! 勝手に入ってこないでください!」

近くまで行ってみると見知らぬ男が母さんと言い争っている。

「どうしたの母さん!? そいつは何者なの!?」

「ラルフ! 来ちゃダメよ!」

「んだよこのガキ」

「おっ、お前こそ何者なんだよ!?」

「ああぁん? 見てわかんねぇかな? 俺らは”勇者様御一行”だよ」

男がそう答えると後ろにいた男女が家の中に入ってきた。

「ちょっと~コウイチ~! 家に入るのに何手間取ってるのよ~おっそーい!」

「ねぇコウイチくん、僕お腹空いてきちゃんたんだけど~」

神経質そうな女と大柄な男は不機嫌そうに口を開いた。

「わりぃなマヤ、ケンジ」

「勇者様だって? お前らみたいなやつが勇者なわけないだろ!!」

少なくとも僕の知っている勇者は勝手に人の家に上がり込んだりはしない。

「ったくこのガキうっせぇなぁ! 黙ってそこどかねぇと・・・わかってるよなぁ!?」

男が不気味な笑みを浮かべている腰に差した剣に手をかけた。

「お、お前らなんか怖くないぞ!」

ギラリと鈍く光る剣に思わず声が上ずってしまった。

「・・・こんなガキ相手にするのも面倒だからちゃっちゃと”勇者のお仕事”始めちゃいますか!」

「りょうかーい!!」

偽勇者の掛け声とともに三人は僕と母さんを無理やり押しのけようとした。

「ここは通さないわよ!」

母さんは偽勇者の前に立ちはだかった。

「あ~あめんどくせぇ・・・ケンジお前のほうが効きそうだから頼むわ」

偽勇者の代わりに大男が母さんの前に出る。

「ババアは邪魔だからどいててねっ!」

「何するのよ! 話しなさいよ!! きゃっ!? 」

大男は母さんの腕を掴むとそのまま投げ飛ばした。

「!? 母さん大丈夫? ねぇ!母さん!!」

「だ、だいじょうぶよ・・・」

「おぉ! 美しき親子愛ってやつかw泣けるねぇ~」

奴らは僕らのほうを見ながら憎たらしい笑顔で笑っている

「きさま・・・よくも母さんを・・!」

「おぉ? 本物の勇者様の前で勇者気取りかぁ? いい度胸じゃねぇかwでもこんなガキに付き合ってる暇はねぇんだよな!」

そう答えると偽勇者は家の奥まで入り込み家中を荒らし始めた。

「!? お前何してんだよ!?」

「はぁ?何ってお仕事だよw 冒険の序盤は金ないからさ民家のタンスや壺とか探してアイテムや金を探すのはRPGの常識でしょw」

「??? 人の家に勝手に入るのは盗賊と同じだろ!? 」

「ほんとこのガキはうるせぇな! 村人ごときモブキャラは何されてもヘラヘラと笑ってりゃいいんだよ!」

偽勇者がこちらを怒鳴りつけていると後ろにいた女がこちらにやってきた。

「ああ! もう限界!」

女が急に叫んだ後、何やら唱え始めた。

「 ・・・アイシクルランス!!」

女がそう言った瞬間、僕の目の前に氷の槍が現れ肩を掠め後方に飛んで行き壁に突き刺さった。
冷たさとともに痛みを感じ自分の肩を見ると服が破れ血がにじんでいた。

「ひっ! 痛いっ! 痛い・・・」

僕は痛さと恐怖でその場にへたり込んでしまった。

「やぁっと大人しくなったわね」

「・・・僕たち人間が魔法を扱うことなんて簡単にできないはずなのにどうして!?」

「え~この世界の人間はこんな初級魔法ですらロクにつかえないのぉ~? よっわーい
もしかして私みたいな魔法使いって相当すごいのかしら!?」

「邪魔なモブキャラも大人しくなった事だし、レッツお仕事♪」

行動も言動も理解できない奴らを前にして、僕にはもう抵抗する気力すらなくなっていた。
ここで反抗し、奴らをさらに怒らせてしまい
取り返しのつかないことになることの方が今の僕には怖かった。

僕が大人しくなったのをいいことに奴らは上機嫌に家中を荒らしていく。
タンスをひっくり返し壺を割り金品や食料を根こそぎ奪っていく
僕はそれをただ見つめることしかできなかった。

「あんまいいもんなかったけど、序盤の村じゃこんなもんかな! よーし次の家にいくぞー」

そう言い残すと奴らは後片付けもせず僕の家から去って行った。
去った後には無残に荒らされた家具と呆然と立ちすくす僕と母さんだけがその場に残った。

一つだけ確かなことは、この日僕の夢が簡単に崩れ去ってしまったことだけだっだ。

コメント