プロローグ

【朗読】「勇者に改心の一撃を!」 第1話【Vtuber】

僕は、白い壁で囲まれた部屋の真ん中でベットに横になっている。
隣には顔はよく見えないけど不思議と懐かしい感じがする女の人が座っている。
目が合うと彼女は僕に微笑みかけ、優しいゆったりとした口調で本を読み始める。

それは、遠い世界のお話。

人々の平和を脅かす悪い魔王とその手下たちを、異世界からやってきた勇者達が封印する物語。

話を読み終わると彼女は本を閉じ、僕の頭にそっと手を乗せ優しく撫でる

「――また【物語の夢】か」

小さいころから何度も見るこの夢を僕は【物語の夢】と呼んでいる。

前にこの夢のことが気になって、母さんに相談したことがある。

「それは、あなたの前世の記憶かもしれないわね」

それが母さんの答えだった。

僕の住むこのセルリタという世界では
遠い世界で不幸にも死んでしまった子供たちの魂が、この世界に生まれ変わることがあるようで
前世の楽しかった記憶を成人になるまでの間、夢の中で追体験するという言い伝えらしい。
この世界では僕たち夢を見る子供たちの事を”夢見る子”と呼んでいる。

「でもね、ラルフ。
どんなに楽しい夢でも、そのことばかり考えてしまっていては簡単に心が支配されてしまうわ。
今生きてるのはあなたであって夢の中の子ではないのよ
・・・それを忘れないで」

あの時の真剣な眼差しは今でも忘れない

「難しい話だったかもしれないけど、必ずわかるときがくるはずよ。
あなたはあなた自身として、前世の子の分まで精いっぱい生きればそれでいいのよ」

そう言って母さんは笑顔で僕の頭を撫でてくれた。
夢の中の彼女と同じ、温かく優しい手だった。

支配されるほどではないけれど、夢の影響で勇者にあこがれたことはある。
旅に出てみたいなと思ったことだって何度もある

でも、この世界には悪い魔王も手下もいない

その代わりに良い魔王様と魔族はいる。

この世界に全体に存在する魔力という力は、強大な力を持っている代わりに
上手く制御できないと暴走してしまうとても恐ろしい力だ。

僕たち人間は魔力がほとんどない種族で、特に影響も受けないけど
魔族たちはその名のとおり魔力を自らの体に多く持つ種族で、本来なら本能のままに暴れてしまうらしい。
でもこの世界では魔王様が魔力を統べる者として、世界の魔力の均衡を保ってくれてるおかげで
彼らは暴走することなく僕たち人間と同じように暮らすことができている。

悪い魔王に立ち向かう勇者になれないのはちょっぴり残念だけど、家族や村の皆との平和な日常が続けばそれでいい。

――これが僕の夢だ。

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